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小説と違う展開! 映画「渇水」を観て [読書]

Amazon Prime Video の新公開作品に「渇水」が入っていたので、さっそく観てみました。
この映画は2023年6月公開ですから、わずか3カ月程度で配信というユーザーにとってうれしい配信です。

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この原作は、1990年に文學会新人賞を受賞し、第103回芥川賞の候補にもなった、河林満さんの短編小説です。

SKassui.jpg

この小説は自身が市職員だった経験を元に書かれたとされていますが、経験が生かされているためかなかなかリアルな描写で、読者をひきつける魅力がある作品でした。
残念ながら、河林さんは2008年に57歳の若さで脳出血のため亡くなっています。

原作のお話は、
市役所の水道課に勤める岩切は、水道料の支払いが滞っている家を訪ね「停水執行」という水道を止める作業を毎日淡々と行っています。小出秀作という3年間も払いが滞っている家で、恵子と久美子という小学生の姉妹に出会います。秀作は長く家に戻っていないし妻も不在が多く、子ども達だけで生活しているような状態の中、停水を執行すべきかどうか迷いますが停水を執行します。そして...。

この作品、かなり短めの短編小説なので、1時間40分の映画ではどのような内容になっているのかと、興味津々で観始めました。

映画では、小説の中ではサラッと触れられただけのエピソードも丁寧に深堀して表現されていました。
又、原作にはないシチュエーションもふんだんに取り入れられストーリーを肉付けしていました。
これが、決して誤った解釈だとは思いません。製作スタッフが原作から感じた情景を分かり易く伝えた結果だと感じました。

しかし、最も意見が分かれるのはラストの展開でしょう。
原作では救いのない結末で気持ちが落ち込んでしまうような内容なのですが、映画では一筋の希望がみられるような感動のヒューマンドラマ的な内容になっていました。

このラストから考えると、この映画は「渇水」という小説の名前とシチュエーションを借りた全く別のドラマという事ができるかもしれません。
おそらく、これは許せないという人もいるでしょうが、私はこれもアリだなと思いました。
こういう展開のストーリーも立派に成り立っているじゃない、という感じです。
言ってみれば、「マルチ・エンディング」的視点で観れば、楽しむことができます。

ただ、一つ気がかりなのは、原作者の河林満さんが生きていたらどんな感想を持ったのか、という事です。楽しんでいてくれればいいのですがね。


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