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原田マハ「本日は、お日柄もよく」読んでみました。 [読書]

1週間ほど前、我が家で購読している地元新聞の1面コラムに、文化庁の国語世論調査に関連して原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」の内容を紹介しスピーチの常套句と感動的なスピーチについての記事がありました。

このコラムを読んで、俄然この作品に興味がわいてきました。原田マハさんの作品は読んだことがなかったので、この際良い機会だと思って読んでみることにしました。

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この作品は、2010年発表された原田さんの比較的初期の作品のようです。

物語は、主人公の二ノ宮こと葉がいとこの厚志の結婚披露宴に出席している場面から始まります。
「本日は、お日柄もよく・・・」で始まる来賓のスピーチがあまりに退屈で眠気を誘うのと睡眠不足がたたってついつい居眠りをしてしまい目の前のスープに顔を突っ込んで恥をかいてしまいます。
披露宴も進み、ある女性がしたスピーチのあまりの素晴らしさに感動したこと葉は、女性が誰なのか気になり調べると「伝説のスピーチライター」の久遠久美ということがわかります。
スピーチライターとは何かを知らないまま、こと葉は久遠久美に近づきついには弟子入りしてしまします。
その後、こと葉の人生は二転三転し大団円に向かいます。

抱腹絶倒であり涙も感動もあり、とっても楽しい作品でしたが、この作品を通じて良いスピーチとは何かを学ぶことができました。なによりもこの作品に出てくる数々の名スピーチは確かに参考になります。
言葉の持っている力をうまく使う事の大切さを思い知らせてくれます。

読み始めたら、あっという間に読んでしまえる読みやすさと、暖かい気持ちにさせてくれる読後感がとっても良い作品です。読書の秋にお勧めの一作です。
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「どうする家康」ホントは?「徳川家康 弱者の戦略」読みました [読書]

最近テレビは、ニュースとスポーツ以外あまり見ません。
同じ内容の繰り返しばかりのワイドショーや、出演者だけが騒いでいるバラエティー、内容の薄いドラマなどテレビのオワコン化が現実となってきた感があります。

今やテレビは常につけておくものではなく番組を選んで見るものというのが定着してきた感がありますね。
高齢者はまだ何となくテレビを見ている人も多いかもしれませんが、若い人にはテレビを見ない暮らしが当たり前になっているようですね。

我が家でもテレビ番組は選んで見るようにしていますが、NHKの大河ドラマは毎年見るようにしています。なんだかんだ言っても1年をかけてじっくり描いた歴史ドラマはそれなりに面白く、新たな発見もあって毎年楽しんでいます。

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しかし、今年の大河ドラマ「どうする家康」はいつもの大河ドラマとチョッと違いますね。
いつもの大河ドラマは、そこそこ史実に忠実に作ってあるようですが、今年のは大胆に従来常識とされてきた史実をアレンジして独特の解釈でドラマが進んでいきます。

史実とされていることの中にも、歴史学者・研究家により確定したものと、おそらくそうであろうというグレーゾーンのもの、原因や詳細が全くわからないものなどグラデーションがあります。実際、私が子供の頃に観た大河ドラマの中のエピソードが今では研究が進み間違いだったことが分かったものもずいぶんあります。

「どうする家康」は人気脚本家の古沢良太さんが脚本を担当していますが、歴史の中にある不確定な史実を大胆な発想でドラマ化しています。これでは歴史ドラマではないという人もいるようですが、確かに歴史ドラマの形をしたオリジナルドラマと言えないこともない気がしますね。

最初は私も、この大胆なストーリー展開にチョッとついていけないという感じもしましたが、回を重ねる毎に「そういった考え方もあるんだ」「その考え方、面白い!」「その方が納得できる」という場面が増えてきて、今では次のエピソードは古沢さんはどのように仕組んでくるのかと楽しみにするようになっています。案外、こんな鑑賞方法があっているのかもしれませんね。

この作品に出てくる、信長・秀吉・家康・その他の戦国大名は今までにも多くのテレビドラマや映画、小説に取り上げられているので、今さら本来の史実を再現するよりも違った解釈を見せてくれるのが「どうする家康」なのだと思います。

この「どうする家康」には、今までのテレビドラマではあまり取り上げられていなかった小ネタ的史実も取り上げられているようで、その辺の正当な解釈はどうなのかも気になるところです。

そこで人気の歴史学者、磯田道史さんが書いた「徳川家康 弱者の戦略」を読んでみました。
この本では、「どうする家康」に出てくるようなエピソードを正当な歴史の観点で分かりやすく解説してくれてあります。

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この本を読むと、家康の人柄や三河家臣団の実際、信長や秀吉との関係などなど興味深い話が信頼できる歴史資料を基に説明されていますので、この時代の家康を取り巻く環境が良く理解できます。
きっと、これからの「どうする家康」を見る時に、古沢さんはどうアレンジしているのかを理解する副教材になりそうな良著でした。

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小説と違う展開! 映画「渇水」を観て [読書]

Amazon Prime Video の新公開作品に「渇水」が入っていたので、さっそく観てみました。
この映画は2023年6月公開ですから、わずか3カ月程度で配信というユーザーにとってうれしい配信です。

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この原作は、1990年に文學会新人賞を受賞し、第103回芥川賞の候補にもなった、河林満さんの短編小説です。

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この小説は自身が市職員だった経験を元に書かれたとされていますが、経験が生かされているためかなかなかリアルな描写で、読者をひきつける魅力がある作品でした。
残念ながら、河林さんは2008年に57歳の若さで脳出血のため亡くなっています。

原作のお話は、
市役所の水道課に勤める岩切は、水道料の支払いが滞っている家を訪ね「停水執行」という水道を止める作業を毎日淡々と行っています。小出秀作という3年間も払いが滞っている家で、恵子と久美子という小学生の姉妹に出会います。秀作は長く家に戻っていないし妻も不在が多く、子ども達だけで生活しているような状態の中、停水を執行すべきかどうか迷いますが停水を執行します。そして...。

この作品、かなり短めの短編小説なので、1時間40分の映画ではどのような内容になっているのかと、興味津々で観始めました。

映画では、小説の中ではサラッと触れられただけのエピソードも丁寧に深堀して表現されていました。
又、原作にはないシチュエーションもふんだんに取り入れられストーリーを肉付けしていました。
これが、決して誤った解釈だとは思いません。製作スタッフが原作から感じた情景を分かり易く伝えた結果だと感じました。

しかし、最も意見が分かれるのはラストの展開でしょう。
原作では救いのない結末で気持ちが落ち込んでしまうような内容なのですが、映画では一筋の希望がみられるような感動のヒューマンドラマ的な内容になっていました。

このラストから考えると、この映画は「渇水」という小説の名前とシチュエーションを借りた全く別のドラマという事ができるかもしれません。
おそらく、これは許せないという人もいるでしょうが、私はこれもアリだなと思いました。
こういう展開のストーリーも立派に成り立っているじゃない、という感じです。
言ってみれば、「マルチ・エンディング」的視点で観れば、楽しむことができます。

ただ、一つ気がかりなのは、原作者の河林満さんが生きていたらどんな感想を持ったのか、という事です。楽しんでいてくれればいいのですがね。
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オリックス優勝で関西決戦実現!? 50年前小説「決戦・日本シリーズ」再読 [読書]

昨日、オリックス・バッファローズがパ・リーグ優勝を決めましたね。
阪神タイガースのセ・リーグ優勝もあって、セ・パ両リーグの関西チーム優勝が59年ぶりに実現して関西は盛り上がっているのでしょうね。

そのまま両優勝チームがクライマックス・シリーズを突破したら、日本シリーズも59年前の阪神・南海戦以来の関西対決になると話題になっていますね。

こんな状況を見ていたら、突然はるか昔に読んだ「決戦・日本シリーズ」という小説を思い出しました。
1974年に発表され、1976年に早川書房から短編集として出版された「かんべむさし」さんの捧腹絶倒のドタバタ小説です。

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阪神と阪急のリーグ優勝後の日本シリーズ対決を想定して、その騒乱模様を面白おかしく書いています。
阪急といえば現在のオリックスの元球団ともいえますので、今年の状況とダブりますね。(現在のチームカラーやファン気質は違うとは思いますが)

思い出した途端、あの作品を読んだ楽しさも思い出してもう一度読んでみたくなりました。
家の本棚を探してみましたが、どうやら処分してしまったようで見つかりません。
それではと、Amazonのkindleにあるか検索してみたら、ありました。
しかも、kindle unlimited の会員なら無料でレンタルできる対象作品になっていました。
さっそく、タブレットにダウンロードして読み始めました。

物語は、
主人公「俺」の勤める新聞社「スポーツイッポン(スポイチ)」では創立25周年の記念行事が募集され、俺が提案した企画が採用される。
開幕以来破竹の快進撃で独走する阪神と阪急が日本シリーズで対戦するのはほぼ間違いないので(当時はクライマックス・シリーズは無かったので)、これを徹底的に盛り上げようという企画。どちらが日本一になるかの投票ハガキを募集し、日本一になったチームの投票者1,000人をそのチームの選手たちと一緒にその親会社の電車に乗って相手親会社の路線をドンチャン騒ぎしながらパレードするというハチャメチャな企画です。
この企画が発表されると、ファンや関連企業だけでなく直接関係無い企業までもがのって大盛り上がりになるというお話です。

たしか、紙の本では最後は阪神が勝った場合と阪急が勝った場合の騒ぎの状況を対比するように、上下二段の組印刷で表現していたのですが、残念ながらkindleでは章が変わっての表現になっていました。

まさか、実際の対戦はこんなことになるはずはないのですが、ドタバタ具合が爽快で楽しく読み終えることができました。
当時、この作品をきっかけに、かんべむさしさんの作品を読み漁った記憶があります。
kindleにはかんべむさしさんの作品が結構出ていたので、この機会に何冊か読んでみようと思いました。
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結末はいったい? 高橋弘希「叩く」読みました [読書]

毎年、年初に「今年こそ100冊の本を読もう!」と目標を立てるのですが、100冊読むのはかなり難しくて、今年もそろそろ4分の3が過ぎようとしているのに49冊しか読めていません。
今回読んだ「叩く」が、ちょうど今年の50冊目となります。
目標を達成するには、今までの倍以上のスピードで読書しないといけませんね。

私は読む本を選ぶ時、新聞や雑誌の書評欄やYoutubeの本紹介チャンネルで興味を持った本をメモしておいて読むようにしています。
今回の「叩く」も、おそらく新聞の書評欄に紹介されていたんだと思いますが、何に興味を持ったのか全く覚えていません。著者の高橋弘希さんの作品も今まで読んだことがありませんでしたので、なにも知らないまま期待を込めて読み始めました。

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高橋弘希さんは3回の芥川賞候補の後、2018年に「送り火」という作品で第159回芥川賞を受賞された方です。その高橋さんの最新短編小説集がこの「叩く」でした。

・叩く
・アジサイ
・風力発電所
・埋立地
・海がふくれて
の5つの短編で構成されています。

「叩く」は闇バイト(いわゆるタタキ)に応募し、犯行現場で仲間の裏切りにあった男の思いと行動を書いた物語。
「アジサイ」は、突然妻が家を出ていった男の物語。
「風力発電所」は、生まれ故郷を訪れた作家が、近くの町の風力発電所を見学に行き、経験した奇妙な体験の物語。
「埋立地」は、公園で息子に話す、自分が子供の頃の公園設置前に体験した冒険談。
「海がふくれて」は、漁村に暮らす高校生の幼馴染みカップルの青春小説。

どの作品も、登場人物の内面を細かく丁寧に描写した純文学系の作品です。
気取ったところや難解な表現もなく、文章がスルスルと頭に入ってきます。
とても読みやすく、「次はどうなるのだ!」と話に引き込まれ、途中で止めることができません。

しかし、どの作品もはっきりとした結末がありません。
あえて言うと、後の2作品は結末らしい展開はあるのですが期待するほどの大きな展開ではありません。

でも、良いんです!
結末が無くても、結末を読者に想像させてくれます。
良いんです!
大きな展開が無くても、淡々と進む話にどんどん引き込まれていきます。

このような小説は、好き嫌いがハッキリと分かれるんでしょうね。
私は、とっても気に入りました。
読み方によっては、あまり深く考えないで純粋に文章を追うという読書が楽しめますし、どのような結末になるだろうと考えながら読むのも楽しいし、なんとなく面白い作品でした。

高橋さんの芥川賞受賞作品も是非読んでみなくては、あらためて思いました。
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